大判例

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盛岡地方裁判所 昭和23年(行)53号 判決

原告 山崎権太郎

被告 岩手県知事

一、主  文

原告の請求は之を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、被告が、訴外玉山村農地委員会が岩手縣岩手郡玉山村大字川又字西宇登第十四地割十七番の五山林三町一反四畝四歩の内二町分につき、昭和二十三年二月十五日発行の岩手に第二五号買收令書を以て爲した買收処分を取消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求原因として、原告は農地二町八反歩を自作し、馬五頭を育成しているものであつて、之が爲に牧野十一町歩を自作している。而して右買收処分を受けた土地は右自作牧野の一部であつて、而も原告の保有面積の範囲内の牧野であり、且つ原告の自作牧野の中重要な地位を占め、肥料用、飼料用の採草地として、原告の営農養畜上不可欠の牧野である。然るに訴外玉山村農地委員会は右土地につき未墾地買收計画をたてたから、原告は之に対し異議申立をしたが、同委員会は之を却下したので、更に訴願したところ訴外岩手縣農地委員会は之を棄却し、被告岩手縣知事は右買收計画に基き、昭和二十三年二月十五日附岩手に第二五号買收令書を以て買收処分をし、該令書は同月二十六日原告へ交付された。併し前敍の理由により被告の爲した右買收処分は違法であるから之が取消を求める爲本訴請求に及ぶ旨陳述した。(立証省略)

被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として、原告主張事実中、原告主張の土地につき、訴外玉山村農地委員会が未墾地買收計画をたて、之に対し原告より、その主張の如く、それぞれ異議、訴願の申立をしたが、その主張の如く何れも異議却下の決定訴願棄却の裁決となり、被告縣知事が、昭和二十三年二月十五日附岩手に第二五号買收令書を以て買收処分をなし、該令書は同月二十六日原告へ交付されたことは認めるが、その他の事実は爭う。右土地は荒地牧野で自作農創設特別措置法(以下自創法と略称する)の所謂牧野ではなく、法第三十條の所謂農地及び牧野以外の土地である。同條に基く買收の場合は自作牧野の保有面積の制限に從うを要しないのであるから、右買收は違法の点はなく適法有効である旨主張した。(立証省略)

三、理  由

原告主張の土地につき、訴外玉山村農地委員会が未墾地買收計画をたて、之に対し原告より異議申立をしたが、同委員会が之を却下する決定をしたので、更に訴願したところ訴外岩手縣農地委員会が棄却の裁決をし、右買收計画に基き被告岩手縣知事が、昭和二十三年二月十五日附岩手に第二五号買收令書を以て買收処分をし、該令書が同月二十六日原告へ交付されたことは何れも当事者間に爭がない。原告は本件土地は(一)原告の自作牧野の保有面積の範囲内の牧野であり、(二)且原告の営農養畜上必須の牧野であるから右買收計画並に之に基く被告の買收処分は違法である旨主張するを以て、先づ(一)の点につき按ずるに証人沢又権藏の証言によると本件買收計画の樹立されたのは昭和二十二年七月二十日で、証人石川啓治(一、二回)山崎権藏、米沢久吉、沢又権藏の各証言を綜合すれば、本件土地は前示買收計画当時採草地(昭和二十二年法律第二百四十一号を以て改正され同年十二月二十六日より施行された自創法に所謂牧野)であつたことは窺われるけれども、当時施行されていた自創法第三十條第一項第一号によれば農地以外の土地で農地の開発に供しようとする土地は之を買收し得る旨規定し、右農地以外の土地の中には採草地(牧野)をも含むと解すべきで、且右所謂未墾地買收には地主保有は認められて居らないから、訴外玉山村農地委員会が、本件土地を右規定により未墾地として買收することにしてたてた右前示買收計画並に該計画に基く被告岩手縣知事の本件買收処分に違法の点はない。次に(二)の点につき按ずるに成立に爭ない乙第一号証、証人本山繁男、沢又権藏、米内敬三の証言を綜合すれば、原告方は耕地二町九反歩位、他に原野十七町歩位ありて右原野中十町歩位は自作し他は貸付けて居り、本件土地は前示買收当時は充分な管理をしていない荒地牧野であつて、原告自ら採草することは極めて稀であり、寧ろ近隣者の任意採草するに委せていたもので、本件土地を買收しても原告方に必要な採草等に困ることがないことを認めることが出來る。右認定に牴触する証人石川啓治、山崎権藏、米沢久吉の証言部分は遽に措信し難く、爾余の原告提出援用の全証拠を以てしては右認定を左右し難い。されば此点に関しても被告岩手縣知事の爲した本件買收処分に違法の点は認められない。以上何れの点よりするも原告の本訴請求は理由がないから之を棄却することにし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條に則り主文の如く判決した。

(裁判官 大竹敬喜 小嶋彌作 杉本正雄)

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